インテリアエディターDが、高級輸入ファブリックの取り入れ方を実際に見て・触れて・レポートする連載企画。今回は、スイスの老舗ファブリックブランド「フィスバ」の新作発表会に行ってきました。美しいファブリックが作る奥行き深いインテリア空間と新作に見るトレンドをご紹介します。
2022.7.11
vol.1_ 透かして、重ねて、めくって楽しむ「フィスバ」の新作発表会
「フィスバ」の新作発表会の会場に入ってまず驚いたのは、重ねの美学。様々な質感や色彩を重ねたファブリックが、風や人の手で動かされることによって刻々と変化して空間に動きを与えていました。下のベッドコーナーをご覧ください。床までたっぷりと垂らされたスモーキーグレイのレースの仕切り、艶々のラグが踏むたびに陰影を作り出し、折り返したことでしっとりとしたベルベットが見えるキルティングのスロー(キルティングステッチがお花の模様!)、その上にかけられた網のようなキラキラしたファブリック。それらを広げたり、折り返す幅を変えたりすることで、ベッドコーナー自体の雰囲気がシックになったりロマンチックになったり一瞬にしてドラマチックに変化します。よく見るとベッドリネンにはサテンのパイピングが施されていたり、クッションも表裏異なる布が使われていたり(刺繍入りのミルク色の布地!)…それになにより、こんなに展示品を来場者が撫でたりめくったりひっくり返したりする新作発表会は初めて!家具ブランドの新作発表会とは異なる熱気に溢れていました。
伝統とコンテンポラリーを融合させたスイスのホームテキスタイルブランド「クリスチャン・フィッシュバッハ」
新作の生地「FILOMENA」越しに見えるスイスの美しい山々の風景 右/*ご提供元:日本フィスバ様
創始者の名前をブランド名とするハイクオリティなファブリックを取り扱う「クリスチャン・フィッシュバッハ」は、スイスアルプスの山懐に抱かれる街・サンガレンに1819年に設立されました。1971年に4代目クリスチャン・フィッシュバッハ氏が日本販売会社「日本フィスバ」を設立。ファブリックは、インテリアよりもファッションの歴史が長いことからファッション分野の影響が強く、時代の感性をいち早く捉えていることもフィスバの特徴です。確かな手仕事と美しい色展開で、モダンにもクラシカルなインテリアにもマッチします。
繊細に色を重ねてオリジナリティーのあるインテリアを作りたい方や、クラシカルだけどコンテンポラリーな要素も取り入れたい方にオススメです。
「サンクリドー」 によるフィスバ製品の納品事例 伝統的なダマスク模様を大きく立体的に仕上げたことでコンテンポラリーな要素を加えたレース生地「BONNIE」に無地のドレープを合わせたインパクトのある窓辺
新作「ARCADIA」コレクションのテーマは、自然回帰
新作の「ARCADIA」コレクションのインスピレーションの源は、スイス・サンガレンの自然に囲まれた生活への憧れ。美しい山々、新鮮な空気、可愛らしい野生動物たちなどを抽象的に、時に写実的に織り出したファブリックの数々。それらを6代目CEOのマイケル・フィッシュバッハ氏自らが大きくふわりと広げ、機能の解説や空間への取り入れ方のアイデアを紹介してくれます。スイスの美しい田園風景の中にあるフィスバのカーテンのイメージを眺め、夢のようなインテリアイメージの数々に胸が高まります。
「世界中の人々に、ファブリックで美への夢を与えていきたい。それが、私たちの夢でもあります。」と語る6代目CEOマイケル・フィッシュバッハ氏
一方で「日本の住宅にどうやって取り入れるのだろう?」と疑問に思いながら眺めている自分もいました。ところが魅力的なファブリックは無理にカーテンに仕立てなくても十分魅力的に空間で存在感を発揮することをこのあとすぐに知る事になります。
「サンクリドー 」ではフィスバの生地を1mからお取り扱いできるので、一幅でフラットのスクリーンのように仕立てたり、葉っぱの刺繍を活かしたクッションに仕立てたりもできます。カーテン屋さんにクッションやスクリーンをオーダーしてもいいとは気が付きませんでしたが、縫製工場では様々な仕立て方をしていたことを思い出して、納得。
一方で透け感があり、たたむ時にグロッシーな質感の変化が楽しめる生地は、大きく使うことでその魅力が最大限に発揮されることも知りました。
室内に陽の光と自然の風景を取り込み、空間を満たすような効果が得られる新作の生地「FILOMENA」
サスティナブルは持続可能なだけではなく、美しさも重要な視点
フィスバには、14年前から取り組んでいる「BENU(ビニュー)」というリサイクル・サスティナブルな素材の取り組みがあります。アパレルの残布を色別に糸を解く事で染色の工程を省き、大幅に水・化学薬品の使用や二酸化炭素排出量を抑えた厚地のファブリックや、キラキラと空間を華やかに彩る海洋プラスチック100%のレース。それらはとても美しく、同時にサスティナブルでもあります。持続可能というだけではサスティナブルとは言えない、そういった姿勢にフィスバのものづくりへの美意識を感じました。
左/ 「BENU 」シリーズ [BENU CHECK]は椅子張りにも使えインテリアに親和性が高い
右/ 海洋プラスチック100%の「BENU NET」縦使い横使いで表情を変えている
いかがでしたか?「サンクリドー 」にはフィスバをはじめとした輸入高級生地が種類豊富にあり、それらの生地の魅力をインテリアでどのように使えば発揮できるかを熟知しているプロフェッショナルがいます。 インテリアファブリックを憧れで終わらせない、その一歩を踏み出してみませんか?
文章:土橋陽子